すさみ町の夏①
2024年7月、すさみ町へ。4年ほど前からずっと惹かれていた町は、稲積島(いなづみじま)と夕焼け空がひろがる浜辺が迎えてくれた。すさみ町は海岸線をドライブするとずーっと絶景つづき。山と海が、浴槽のヘリとお湯のように近い。伝わるだろうか。到着するまでうっとりする景色の連続で、中でもこの浜辺の景色が暫定ベストすさみ風景かも。
深いみどりがこんもり浮かぶのは稲積島。天然記念物指定されている。知の巨人、植物学者の南方熊楠は植物生態学(エコロジー)を研究する上で稲積島は重要なフィールドであると言っていた。(南方二書)上陸には許可が要るが、島までつづく堤防を歩けばそばまで行ける。「稲積島暖地性植物群落」にはオオタニワタリが多く生えているそうだ。いつか入ってみたい…。
うらやましくも、この浜辺が見える部屋を借りて暮らしている友人ゆっこ。彼女は名古屋時代の職場の同僚で、すさみに拠点を構えたのはコロナ禍のこと。
ザ・団地のコンパクトな間取りで、Wi-fiビュンビュン、窓辺に仕事机とデスクトップ、長時間座り心地重視の椅子が置いてある。”働き方現代アワード”があったら入賞必至の乙な環境。ただ一点、エレベーターがないので、クソ暑い南紀の夏でも階段の上り下りを強要される。が、デスクワーカーにはちょうどよい負荷の運動ということも含めて良い環境!
夏は海水浴客でにぎわう浜辺は冬がくるとひと気なく灰色の波がザザーンっと打ちつけるだけで時がすぎる、そのちょっと寂しげなすさみの表情に彼女は惚れたらしい。
さて、今回の旅は2泊3日のすさみ滞在だ。といっても、1日めは夕方からスタートなので、とても短いすさみ時間だった。すさみに来た目的は3つある。
- ゆっこに会うこと
- 琴の滝でシダまみれ
- 本州最北端のヘゴに会う
到着して早々、汗を流す。サンセットすさみ で熱めの温泉にベビ助と入浴。子連れ旅は洗い物が多いので、サンセットすさみは、宿泊客でなくても利用できるコインランドリーが超ありがたい。(しかも安い!)ホテルのフロントには漫画スペースや子どもの遊具もあり、ベビ助は退屈せずキャッキャ遊んで洗濯待ちできた。家族利用客を大切にしてくれる施設だのだ。
入浴後は、近くのすさみ食堂へ。(ゆっこチョイスは渋い。)おばちゃん一人で切り盛りしているところへ地元客が絶えず来店している。ひと席しかない座敷が空いたタイミングで入店できてラッキー。さんま寿司が名物でこの日は売り切れ。かわりに注文した唐揚げ定食は美味しかった。いそがしく接客する合間、子にむけてくれるおばちゃんの笑顔がやさしい。
老後もお金を稼げる腕があることは自分も目標としたいところで、ひとりでもお店の経営を続けるわけを勝手に想像する…。きっとこうやってお腹を空かせた人たちの胃袋を満たすことが生きがいなのかな、と。何はともあれ、大手チェーン飲食店が無いすさみ町では、地元民か観光客か問わず大事にしたい食事処だと思った。その夜は、ゆっこのお家へころがりこみ、一泊させてもらった。
朝早く起きて、隣町の白浜町へモーニングしにちょこっとドライブ。宅地に入り、細い路地を進むと目当ての民家カフェ かぐれがあった。扉を開けると、近所に住むおばあちゃまおじいちゃまが、相席してぎゅうぎゅう詰めで、コーヒーのかおりだけが自由に漂う。若い女性2人と赤子1人。完全にアウェーな雰囲気になる覚悟で席に腰掛けると、お子に声をかけてくれるおばあちゃまたち。子はかすがい、とは他人とのあいだでも成立するようで。子の愛嬌で一気に和み、トーストを1枚おかわりする余裕すらある朝食に感謝。
モーニングのあとは、琴の滝でシダまみれ。わざわざ車中泊で大阪から来てくださったご夫妻と、ゆっこのお友だちも合流して、わいわいと滝にむかってシダ散策でした。園芸品種に詳しいご夫妻は野生のシダたちを見て嬉々としている様子。私もうれしくてシダ話に華が咲く。
いくつもの滝を横目にたどり着いた”琴の滝”は、大きな滝壺がエメラルドグリーンに輝いていて、丸みのある岩の向こうで優雅な滝がドドドドー!と落ち流れる。ひょ〜、涼しい〜!飛び込みたい衝動!
滝に向かって左手の岩壁を見上げると、イワヒトデ(ウラボシ科イワヒトデ属 Colysis elliptica (Thunb.) Ching.)の群落があり、滝壺から巻き上がる風にゆられて、涼しげに手をふってくれてました。足元にもたくさんの小さなイワヒトデたち。
今回は、自分と子のキャパを確認したシダまみれだった◎ 薮の少ない、ある程度整備されたルートで短時間(60〜90分)なら、子を背負ってできるかもしれない。背中に汗の滝が流れるから夏は避けるべきだけど…!気張らずにおさんぽ程度のラフなものはイケる。
シダまみれのあとは、汗まみれのお子と私。ゆっこにお願いしてシャワーを浴びさせてもらう。小さい子がいると、夏は出かけ先にシャワーがあるかどうかは大事かも。ほんまに、ゆっこ、ありがとう!
②へつづく…