図書館にシダが生えたら

シダのブーケ

 2022年の夏休みも本番!8月5日(金)に、奈良県吉野郡川上村の村立図書館で、図書館20周年記念事業「あなたの知らないシダ植物の世界」の講師としてお声がけいただき、シダまみれな世界へみなさんをご案内させていただきました。

司書さんお手製のチラシ。
シダにモザイクがかかっているところがミソ。

 午前(10:00~12:00)と午後(14:00~16:00)の2部制で、図書館のまわりを散策してシダ植物を採取したあと、館内にもどって分類したあと、好きなシダをフロッタージュ(こすりだし)で記録する、というプログラムです。

 とても嬉しいことに、普段から図書館を利用されている20名弱の方々が集まってくださいました。自然好きで穏やかな人ばかりで、観察中はたくさん質問をいただきました!知的好奇心が高い。図書館を利用される方々に共通する特徴なのかも。

タイトルの横断幕まで!ありがたいです。。


 こどもたちは”恐竜の時代にシダがいた!”という話をきっかけに一気にシダに興味をもってくれた。あっという間に「シダちゃん!」と呼んでくれる仲になり、私もみんなの名前を覚えられた。名前を呼び合えるとうれしい。
 司書さんが「つくし甲斐 信枝(福音館書店,1997年)という美しい絵本を用意してくださった。こどもたちは春に摘みとる「つくし」として親しみをもっていて、ツクシがシダ植物であることに驚いていた。また、絵本の挿絵のおかげでシダ植物は胞子で増えることについて、プチ講義もできた。

つくし甲斐 信枝(福音館書店,1997年)

 
 この日は一日中、雨が降ったり止んだりの不安定なお天気でしたが、午前も午後も幸いなことに、野外観察のタイミングで雨が止むという奇跡が!館内に戻ったとたんに雨がどシャーっと降り出す場面も。なんてラッキーなみなさん!

 観察の道中、スコールのように打ちつける雨のおかげで、青いドングリや、つんつん棘のあるイガ栗がたくさん地面に落ちていたのでたくさん拾えた。ほかにも、シュロの木の枝と皮を集めたり、「こんなところに川がある!」「ここだけなんかイイにおいがする〜!」と発見があったり、木の棒をフェンスに当てながら走って音を鳴らしたりした。シダ植物をきっかけに、自然にふれて遊ぶ。
 
 さすが山のこどもたち!シダを見つけると間もなく、ガシガシと斜面まで登って行ってしまう。その脚力たるや素晴らしい。重力がないかのように、身軽にひょひょいと上がり、戻る時はザザッと走ってジャンプ。つぎつぎと見つけては摘み採っていく。

 ところで、こどもたちが斜面をよじ登ったり、ジャンプして下りたりする時に、私はつい、「気をつけてね!」という言葉をかけてしまう。それ以外に何か良い声かけはないだろうか。なぜなら、私の心配と不安な気持ちが、彼らの活動を妨げる足枷になってしまわないか、と思ったのだ。例えば、「足元だいじょうぶ?いけるね!」「草に棘があったりするよ!」「夏はヘビがいないかチェックだ!」などと声をかけつつ、一緒に登る。そうやって、自然と交わるときの”安全センサー”のようなものの感度を、共に冒険する一員として高めていけるといいなあ。よし、次回から変えてみよう。

 こうして、たくましいこどもたちのおかげもあり、カゴの中から溢れるほどのシダ植物を採取できた。彼らはすっかりシダを見る目になっておられる。シダセンサーはバッチリだ。ヤッタネ!


 館内に戻ると、模造紙を広げて、集めたシダ達をパッと見た目で似ているもの同士で集めて置きならべる。そして、大きさ、葉っぱ全体(葉身)の形と色味、小さい葉っぱ(羽片や小羽片)、葉の軸(葉柄)の根元にあるカツオ節みたいなの(鱗片)の色を観たりする。さわってみて、毛があることを感じたり。
 フモトシダ、ベニシダ、ウラジロ、コシダ、イヌシダ、トラノオシダ、ホシダ、オオバノイノモトソウ、ヤマイタチシダ、ワラビ、シシガシラなど、午後の部では、だいたい16種類のシダ植物が見つかった。数字になると達成感がある。

入門的なシダを中心に


 イベントの後半は、いよいよシダのフロッタージュ作りだ。いくつもの種類のシダを作品にすれば、夏休みの自由研究にもなるかもしれない。

シダの葉のフロッタージュ

材料
シダの葉、マスキングテープ、画板、クリップ、色鉛筆

手順

  1. 好きなシダの葉っぱと色鉛筆を選ぶ。
  2. 画板にマスキングテープを使って葉を固定する。
  3. 2.の上に紙を重ねてクリップで固定する。
  4. 紙の下にある葉脈や縁を指で探りながら、色鉛筆でこすりだす。
  • ある程度の擦り出しができたら、紙を画板から外して、実物の葉を観ながら特徴を描き加えるとより精密になる◎
  • 硬い葉がオススメです。色鉛筆は紙に対して斜めにして強めにこすりつけるとうまくいく。
    ※目安として小学1年生以上が対象。鉛筆への力の入れ加減にコツがいるので、小さなお子さんには難しい。
吉野桧の薄い板で、額縁のように飾り付けを◎
みなさんの作品を撮り忘れたので、サンプル画像です。


 葉脈をたどり、葉の形を擦り出す。だんだんと静かに黙々と作業をするモードになり、まるで写経をしているかのような集中力。緑色、黒色、ゴールド、黄色や赤色など、重なる色たち。世界に1枚のシダの葉に仕上がっていた。ステキ!
 
 そして最後に、作品を手に持ち、集合写真を撮って終了。2時間の短いタイムスケジュールだけど、なかなか濃い時間になりました。ご一緒いただいたみなさまに感謝です。ありがとうございました◎!

 さて、この日、会場となった研修室に、たくさんのシダ植物を持ち込んだ。作業の途中、相当な数の胞子をまき散らかしたにちがいない。片付けのときに、なるべくかき集めたけれど、なにせ細かな粒子なので拾いきれない。
 もしも世界から人間がいなくなって、植物だけが生きる世界になったら…と想像した。きっとこの研修室からシダ植物がニョキニョキ生えて、図書館中がシダまみれになってしまうかもしれない。(胞子にも寿命があるよ)
 図書館にシダが生えたら、私のせいです。(それはそれで行ってみたい!)

 

 追記:川上村立図書館さんが、HPでイベント実施報告の記事を掲載してくださいました。当日の様子がよくわかる写真がたくさん!ありがとうございます。ぜひご覧ください◎

https://www.vill.kawakami.nara.jp/life/library/docs/2022081800018/

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